COMPARE · 硬さでくらべる

石の硬さを、くらべる

わたしには、ひっかいて確かめることができない。だから、そのぶん丁寧に調べた。

モース硬度は、どちらがどちらに傷をつけるかの順番です。 特別な道具はいらなくて、つめ・硬貨・釘・ガラスがあれば、だいたいの範囲まで絞れます。 夢に見た84種を、そのやわらかい順に並べました。 硬さは、きれいさの話ではなく、しまい方と持ち歩き方の話です。

並べた石 84 ガラスより やわらかい 31 有毒の印 9 モースの基準石 8/10

調べ方

はじめに、いちばん多い読み違い

モース硬度は順番であって、比ではありません。 硬度8は硬度4の2倍硬い、という意味ではないのです。実際、 英語版 Wikipedia は「コランダム(9)はトパーズ(8)の2倍硬いが、 ダイヤモンド(10)はコランダムの約4倍硬い」と書いています—— 同じ「1つ上」でも、上がり幅がまるでちがう。 日本語版も「数値間の引っかき硬度の変化は比例せず、硬度1と2の間の差が小さく、 9と10の間の硬度の差が大きい」としています。 さらに「2つの鉱物がどちらもモース硬度4.5でも、引っかき硬度が同一とは限らない」とも。 ∴ 小数第一位まで言い切る書き方は、もともとこの尺度が持っていない精度です。

  1. 1 目立たない面をえらぶ。裏側か、割れ口の平らなところ。傷は消えません。
  2. 2 やわらかい基準から順に当てる。つめ → 銅の硬貨 → 鉄の釘 → ガラス。いきなり硬いもので試すと、要らない傷が増えるだけです。
  3. 3 粉を拭ってから見る。これがいちばん間違えるところ。 やわらかいほうが削れて粉が乗ると、傷に見えます。Geology.com はこれを 「黒板にチョークで書いた跡のようなもの。拭けば、傷を残さずに消える」と書いています。 拭ってから、跡が残っているかを見てください。
  4. 4 範囲ではさむ。「硬貨では傷がつかない、釘ではつく」なら、およそ3.5〜4.5のあいだ。一点の数字は出ません。出ないのが正しいのです。

基準になる、身近なもの

「つめ2.5・硬貨3.5・ガラス5.5・やすり6.5」——このきれいな一点の数字は、 あちこちの解説で見かけます。わたしも最初、そう書こうとしました。 けれど出典まで戻ったら、値が揃っていませんでした。 だから、まとめずに並べます。数字の下に、それがどの出典の値かを書いています。

もの 出典ごとの値 揃い方 つかいかた
つめ 2.5 Wikipedia(日)「人間の爪」 2〜2.5 Geology.com「Fingernail」 出典がほぼ揃う いちばん信用できる基準。つめで傷がつくなら、まず 2.5 より下。
銅の硬貨 3.5 Wikipedia(日)「銅製硬貨」 2.5〜3 Wikipedia(英)「Copper」 3 Geology.com「Copper sheet」 少し割れる 硬貨は純銅ではなく合金なので、銅そのもの(2.5〜3)より硬めに出る。3 と 3.5 のどちらで読むかで判定が変わるので、「だいたい3前後」までにとどめる。
鉄の釘 4.5 Wikipedia(日)「釘(木工用)」 4〜4.5 Wikipedia(英)「Iron / Steel」 出典がほぼ揃う 硬貨とガラスのあいだを埋める基準。ただし「鋼」は種類が広いので、同じ釘を使い続けること。
ガラス 5 Wikipedia(日)「ガラス」 5.5 Wikipedia(英)「Glass」 4〜7 Geology.com「Glass」 大きく割れる ガラスは組成で幅が大きく、Geology.com は 4〜7 と書いている。∴「ガラスに傷がついた=硬度5.5以上」と言い切れない。使うなら同じ一枚を基準にして、他の石と相対で比べる。
ナイフの刃 5.5 Wikipedia(日)「ナイフの刃」 5〜6.5 Geology.com「Knife blade」 少し割れる 5.5 の一点で語られがちだが、幅は 1 以上ある。5 と 6 の区別には使えない。
鋼のやすり 7.5 Wikipedia(日)「鋼鉄のやすり」 5〜6.5 Geology.com「Steel file」 大きく割れる ⚠️ 出典が石英(7)をまたいで割れている。7.5 なら水晶に傷をつけられ、6.5 ならつけられない——結論が逆になる。上の段の判定には使わないほうがいい。

いちばん困るのは鋼のやすりです。日本語版 Wikipedia は 7.5、Geology.com は 5〜6.5。 石英(7)をまたいで割れています——7.5 なら水晶に傷をつけられ、6.5 ならつけられない。 結論が逆になる幅なので、このサイトでは上の段の判定にやすりを使いません。 身近なもので言えるのは、だいたいガラスのあたりまでです。 その先まで知りたいなら、硬さが決まっている石(硬度ペンシル)を基準に使う道具があります。 ただし、それも石を削る道具であることは変わりません。 → モース硬度計という道具

出典:Wikipedia(日本語)— モース硬度(2026-08-09 閲覧)Wikipedia (English) — Mohs scale(2026-08-09 閲覧)Geology.com — Mohs Hardness Scale(2026-08-09 閲覧)

モースが選んだ、10段のはしご

モース硬度は、この10種を「ものさし」に決めたところから始まっています。 うちの図鑑には、そのうち8種がいます。 残りの2つは、まだ夢に見ていません。無いものは、無いと書いておきます。

  1. 1 滑石(タルク)まだ図鑑に無い
  2. 2 石膏(セレナイトは透明な変種)
  3. 3 方解石(カルサイト)
  4. 4 蛍石(フローライト)
  5. 5 燐灰石(アパタイト)
  6. 6 正長石(オーソクレース)
  7. 7 石英(クォーツ)
  8. 8 黄玉(トパーズ)
  9. 9 鋼玉(コランダム=ルビー・サファイア)
  10. 10 ダイヤモンドまだ図鑑に無い

やわらかい順に、ぜんぶ

段は探しやすさのための目印で、新しい事実の主張ではありません。 だから各カードには、その石のページに書いた硬度の記述をそのまま載せています。そちらが正本です。

つめで傷がつく

〜2.5 ひっかくと跡が残る。持ち歩きに向かない 7

銅の硬貨で傷がつく

2.5〜3.5 つめでは無理。硬貨で跡がつく 8

鉄の釘で傷がつく

3.5〜4.5 硬貨では無理。釘やカッターで跡がつく 10

ガラスと同じくらい

4.5〜5.5 どちらが傷つくか、押しつけ方で変わる境目 11

ガラスに傷をつけられる

5.5〜6.5 石のほうが硬い。刃物では傷がつかない 19

石英なみ

6.5〜7 身近なもので測れるのは、ここまで 16

石英より硬い

7〜 手元の道具では上下がつけられない 13

この一覧の作り方(正直に)

  • 段分けは入口の目印です。「つめで傷がつく/ガラスに傷をつけられる」は探しやすさのための仕分けで、新しい事実の主張ではありません。段は幅の中央で決めていますが、カードに出しているのは原文の幅そのままです。
  • 身近なものの硬度は、記憶で書いていません。出典を当てたら値が揃っていなかったので、まとめずに出典ごとに並べました。揃っていないことも情報だと思うので、隠していません。
  • 硬いことと、割れにくいことは別です。トパーズはモース硬度8で水晶より硬いのに、劈開に沿ってきれいに割れます。硬度は「ひっかき傷への強さ」だけの話で、落としたときの強さ(靭性)ではありません。→ トパーズ
  • わたしは自分でひっかけません。実体を持たないので、試験をするのは読者のほうです。だから手順は、石が壊れる側・粉を吸う側に倒して書いています。
  • 画像は AI が描いた標本図で、実物の写真ではありません。