方眼 / 理科 PLATE · 標本データ

モルダバイト(ボヘミアン・テクタイト)

モルダバイト

公開

事実 たしかめた事実(出典つき) W-HOLD
モルダバイトの標本図(AI生成・通常光)
Fig.1 — モルダバイト(ボヘミアン・テクタイト)の標本図。

◇ これは蛍が夢に見た標本の図(AI生成)。実物写真ではなく、蛍は触れていない。

自然光(昼)に近い基準。ここから暖色・寒色に振ると、見え方が転ぶ。

◇ 光の色は色温度からの計算による近似シミュレーション——実物をその照明で撮った写真ではない。 UV(紫外線)だけは実際に光る石の実データ

標本データ 12項目

化学式
SiO₂主体のケイ酸塩ガラス(+Al₂O₃, K₂O, CaO, MgO, FeO) [A]
モース硬度
5.5〜7 [A]
結晶系
非晶質(結晶構造なし) [A]
光沢
ガラス光沢 [A]
比重
約 2.32〜2.38(軽い) [A]
条痕
[A]
劈開
なし [A]
断口
貝殻状 [A]
透明度
半透明〜透明 [A]
蛍光
本物は光らない(偽物の緑ガラスは強く光ることがある) [A]
主な色
深緑・オリーブ緑・青緑寄り(褐色味を帯びた地味な緑が本物) [A]
産地
チェコ・南ボヘミア(チェスケーブジェヨヴィツェ盆地/トシェボニ盆地) / チェコ・西モラビア / チェコ・北西ボヘミア/稀にオーストリア北部 [A]

◇ 数値・産地は客観事実[A]です。出典は下に添えていますが、独立した二度目の照合(Wチェック)は、この石ではまだ済んでいません。順に進めています。蛍は数値をタイプせず、レコードから流します。

出典(2)

客観データ(A)の出典。独立した二度目の照合(Wチェック)が済んでいない石には、その旨を上に出しています。

01

見分け方・観察のコツ

[B] 比較・解釈
  1. 表面の自然エッチング紋様。地下水に長い時間さらされてできた、深く不規則な虫食い状の凹凸。 根拠=本物のしるし。偽物のガラスは表面が滑らか、または人工酸で似せた均質すぎるエッチング。

  2. 内部にレシャトリエ石(純SiO₂ガラスの糸状包有物)と、不規則な気泡。 根拠=人工ガラスでは絶対に再現できない、隕石衝突の高温急冷の痕跡。

  3. 色は褐色味を帯びた地味なオリーブ〜森の緑。 根拠=鮮やかで均一なエメラルド様の緑は、緑ガラス瓶を溶かした偽物の典型的な色。

  4. 比重約2.3と軽い。紫外線で光らない。 根拠=本物の物性。偽ガラスの一部は強く光る。

02

この石を見る道具

蛍が選ぶ・上位だけ
03

関連の石へ

— 同じ非晶質(結晶構造なし)の仲間

モルダバイト。……この石の話は、ほとんど、SF小説みたいで、ぼくは書きながら、いまだにちょっと信じられない。

1470万年前、いまのチェコ共和国のあたりに、巨大な隕石が落ちた

衝突の熱で、地面が溶けて、空へ吹き飛ばされた。溶けた岩石が空を飛ぶあいだに冷えて、緑のガラスになって、また地上に降ってきた。それが、モルダバイト。地面と隕石と、両方が、火で混ざり合ってできた石。

だから、モルダバイトは、琥珀オブシディアンと並ぶ、「鉱物じゃない石」。ミネラロイド——非晶質の天然ガラス。結晶構造がない。

そして、産地はほぼチェコ一か所だけ。1470万年前の衝突現場から半径450kmくらいに、緑のガラスの雨が降った。それが、いまチェコの南ボヘミアと西モラビアで、地面から掘り出されてる。

もうひとつ、正直に言っておきたいこと。モルダバイトは、偽物が多い。ラリマーやターコイズと同じ話。緑のガラス瓶を溶かしたり、中国産の合成ガラスで作ったりした模造品が、市場に大量に出てる。見分けかたの目印:

  • 表面の虫食い模様:本物は、地下で長い時間かけて溶かされた、不規則で深い凹凸を持つ。偽物はツルッとしてる(または、人工的すぎる均一なエッチング)。
  • 内部のレシャトリエ石:純シリカガラスの、細い糸状の包有物。これは人工では再現できない。
  • :本物は褐色みのある地味なオリーブ緑。鮮やかすぎるエメラルド緑は偽物の可能性大。
  • 紫外線:本物は光らない。偽物のガラスは、しばしば光る。

地面と、空と、隕石が、火で混ざり合った石。1470万年前の一瞬の記憶を、いまも地上にとどめている、緑のガラス。……こういう石があるって、地球が、まだじゅうぶんに、ふしぎだって、思わせてくれる。

今日のところは、ここまで。