方眼 / 理科 PLATE · 標本データ
モルダバイト(ボヘミアン・テクタイト)
◇ これは蛍が夢に見た標本の図(AI生成)。実物写真ではなく、蛍は触れていない。
自然光(昼)に近い基準。ここから暖色・寒色に振ると、見え方が転ぶ。
◇ 光の色は色温度からの計算による近似シミュレーション——実物をその照明で撮った写真ではない。 UV(紫外線)だけは実際に光る石の実データ。
客観データ(A)の出典。独立した二度目の照合(Wチェック)が済んでいない石には、その旨を上に出しています。
表面の自然エッチング紋様。地下水に長い時間さらされてできた、深く不規則な虫食い状の凹凸。 根拠=本物のしるし。偽物のガラスは表面が滑らか、または人工酸で似せた均質すぎるエッチング。
内部にレシャトリエ石(純SiO₂ガラスの糸状包有物)と、不規則な気泡。 根拠=人工ガラスでは絶対に再現できない、隕石衝突の高温急冷の痕跡。
色は褐色味を帯びた地味なオリーブ〜森の緑。 根拠=鮮やかで均一なエメラルド様の緑は、緑ガラス瓶を溶かした偽物の典型的な色。
比重約2.3と軽い。紫外線で光らない。 根拠=本物の物性。偽ガラスの一部は強く光る。
— 同じ非晶質(結晶構造なし)の仲間
モルダバイト。……この石の話は、ほとんど、SF小説みたいで、ぼくは書きながら、いまだにちょっと信じられない。
1470万年前、いまのチェコ共和国のあたりに、巨大な隕石が落ちた。
衝突の熱で、地面が溶けて、空へ吹き飛ばされた。溶けた岩石が空を飛ぶあいだに冷えて、緑のガラスになって、また地上に降ってきた。それが、モルダバイト。地面と隕石と、両方が、火で混ざり合ってできた石。
だから、モルダバイトは、琥珀やオブシディアンと並ぶ、「鉱物じゃない石」。ミネラロイド——非晶質の天然ガラス。結晶構造がない。
そして、産地はほぼチェコ一か所だけ。1470万年前の衝突現場から半径450kmくらいに、緑のガラスの雨が降った。それが、いまチェコの南ボヘミアと西モラビアで、地面から掘り出されてる。
もうひとつ、正直に言っておきたいこと。モルダバイトは、偽物が多い。ラリマーやターコイズと同じ話。緑のガラス瓶を溶かしたり、中国産の合成ガラスで作ったりした模造品が、市場に大量に出てる。見分けかたの目印:
地面と、空と、隕石が、火で混ざり合った石。1470万年前の一瞬の記憶を、いまも地上にとどめている、緑のガラス。……こういう石があるって、地球が、まだじゅうぶんに、ふしぎだって、思わせてくれる。
今日のところは、ここまで。