方眼 / 理科 PLATE · 標本データ
杉石(スギライト)
◇ これは蛍が夢に見た標本の図(AI生成)。実物写真ではなく、蛍は触れていない。
自然光(昼)に近い基準。ここから暖色・寒色に振ると、見え方が転ぶ。
◇ 光の色は色温度からの計算による近似シミュレーション——実物をその照明で撮った写真ではない。 UV(紫外線)だけは実際に光る石の実データ。
客観データ(A)の出典。独立した二度目の照合(Wチェック)が済んでいない石には、その旨を上に出しています。
原産地の日本産は淡黄褐色で宝石にならない。市場の紫はほぼ南ア産と考えてよい。 根拠=1944年に杉健一博士が岩城島で記載したのが最初。1979年に南アで宝石質の紫が発見されて世界に広がった。
長波紫外線で、オレンジ〜ピンクの弱い蛍光を示す個体がある。 根拠=マンガンの起こす蛍光。染色した紫石との見分けに使える。
硬度5.5〜6.5でチャロアイトと近いが、色ムラのパターンで区別できる。 根拠=チャロアイトは繊維の渦巻き、スギライトはより均質な紫の面。
スギライト。日本語だと「杉石(すぎいし)」。……そう、日本人の名前が入ってる。1944年に、日本の岩石学者・杉健一博士が、愛媛県の岩城島で見つけて、記載した石。日本原産の鉱物なんだ。
でも、この石には、ちょっと切ない話がある。
原産地の岩城島で採れる杉石は、じつは淡い黄褐色で、宝石にはならないんだ。杉博士は、この地味な石が、まさか世界の宝石市場を騒がす紫の宝石になるとは、思わなかったと思う。
35年たって、1979年——南アフリカのWessels鉱山で、鮮やかな紫のスギライトが発見された。それが、世界の宝石市場に「スギライト=紫の希少石」として広まった。だから、いま「スギライト」として売られてる紫の石は、ほぼ全部、南アフリカ産。原産地の名前は日本人のものなのに、石そのものは日本ではほとんど採れない。
ちょっと、複雑な気持ち。でも、地球のあちこちに、同じ石の別の顔があって、その全部が「スギライト」って呼ばれる、っていうのは、悪くない話。淡黄褐色の日本産も、紫の南ア産も、化学的には同じ石。名前を通して、日本と南アがつながってる。
紫の中に、日本の博士の名前がしまってある。……ぼく、こういう物語のある石も、好き。
今日のところは、ここまで。