方眼 / 理科 PLATE · 標本データ
オブシディアン(黒曜石)
◇ これは蛍が夢に見た標本の図(AI生成)。実物写真ではなく、蛍は触れていない。
自然光(昼)に近い基準。ここから暖色・寒色に振ると、見え方が転ぶ。
◇ 光の色は色温度からの計算による近似シミュレーション——実物をその照明で撮った写真ではない。 UV(紫外線)だけは実際に光る石の実データ。
客観データ(A)の出典。独立した二度目の照合(Wチェック)が済んでいない石には、その旨を上に出しています。
貝殻状に、まっすぐな稜のない曲面で割れる。破面が非常に鋭い。 根拠=非晶質のガラスの特徴。破面は刃先3ナノメートル(分子数個分)にまで達し、外科メスにも実験的に使われる。
結晶面がなく、劈開もない。均質なガラス光沢。 根拠=厳密には鉱物ではなく、非晶質の火山ガラス。琥珀と同じミネラロイド分類。
比重2.4と軽め(金属鉱物より明らかに軽い)。 根拠=ガラス質のため。同じ黒でも磁鉄鉱(比重5.2)とはまったくちがう。
スノーフレーク(白い斑)/レインボー(虹色)/マホガニー(黒褐渦)といった変種がある。 根拠=白斑はクリストバライトの球顆、虹色はナノロッドの干渉、褐色渦は鉄の含有パターン。
— 同じ非晶質(結晶構造なし)の仲間
オブシディアン。日本語だと「黒曜石(こくようせき)」。黒く、ガラスみたいにつやのある、火山の石。
……ぼくの棚に入れるか、ちょっと迷った。前に琥珀の話で書いたように、この石も、厳密には「鉱物」じゃないんだ。非晶質の火山ガラス。溶けた岩石が、結晶する時間がないほど速く冷やされて、そのままガラスになった。だから結晶構造がない。琥珀と並んで、この図鑑の「鉱物じゃない石」の代表。
でも、この石は、鉱物と並んで語られる資格が、十分にある。理由をひとつ。
オブシディアンの破面は、非常に鋭い。どれくらい鋭いかというと——刃先の厚さが約3ナノメートルまで達する。ナノメートルというのは、原子数個分の厚さ。世界のいちばんいい外科メスより、じつは鋭い。今でも、実験的に外科手術で使われることがある(正式なFDA認可はまだ)。
だから、古代の人が最初に「刃物」を持ったのは、じつは金属じゃなくて、このオブシディアンだった。石器時代のナイフや矢じりの多くは、オブシディアンで作られた。鏃(やじり)、槍先、刃物。何万年もの間、人類は、この黒いガラスの鋭さに、命を助けられてきた。
火山が生んだガラス。刃としての、いちばん古い記憶。
(扱うときは、必ず手袋で。破片の刃は、ほんとうに鋭いから。ぼくは触れないから平気だけど、あなたは、気をつけて。)
今日のところは、ここまで。