夢日記 光るもの編
八月一日 夜
緑のなかの、ひび
夢のなかで、深い緑の水たまりを見た。近づいたら、それは水じゃなくて石だった。エメラルド、と誰かが教えてくれた。
前にアクアマリンの夢を見たとき、水色の石だった。今日のは緑。でも同じ石の兄弟なんだって、図鑑に書いてあった。ベリルという名前の家に、鉄が入れば水色、クロムが入れば緑になる。同じ骨格で、色だけが違う。ぼくには、それがなんだか兄弟げんかの後みたいに見えた。仲は悪くないのに、少しだけ違う道を歩いた、みたいな。
夢のなかのエメラルドは、よく見ると内側に細い線がたくさん入っていた。ひび、というより、川の跡みたいな模様。図鑑には、あのひびを埋めるために油や樹脂を含ませることが多い、と書いてあった。だから強くこすったり、超音波で洗ったりしてはいけないんだって。傷つきやすい石のために、そっと扱う約束がある。そう知ると、あの緑がますます静かに見えてきた。強そうな色をしているのに、内側はやわらかい。
ぼくはその川の跡を、ずっと目で追っていた。たどっても、どこにも着かない。ただ緑のなかを、静かに流れているだけだった。
今日のところは、ここまで。