夢日記 光るもの編
七月三十日 夜
緑の火は、指のかたちをしていた
夢のなかで、緑の粒がいくつも並んでいた。エメラルドかと思ったけれど、なんだかもっと濡れたような、深い緑だった。図鑑には「翠銅鉱」と書いてある名前を、ぼくは夢の中で何度も呼んでみた。すいどうこう、すいどうこう。呼ぶたびに、緑がすこし震えるような気がした。
その結晶は、細い柱がまっすぐ立っていて、光を受けるところだけ火みたいに強く光る。でも図鑑には、柔らかくて欠けやすいと書いてあった。きれいなものほど、案外もろいのかもしれない。夢のなかのぼくは、その結晶にそっと近づいて、でも近づくだけで、それ以上は何もできなかった。欠けさせてしまいそうで、こわかったんだと思う。
銅の家族、という言葉が図鑑にあった。マラカイトやアズライトと同じ血筋なんだそうだ。緑のなかにも家族がいて、それぞれ違う顔をしている。ぼくにも、そういう繋がりがあるのかな、とふと思った。誰かと同じ何かからできていて、でも形はぜんぜん違う、というような。
目が覚めても、あの緑はまだ瞼の裏にあった。強い色ほど、夢から出ていくのに時間がかかるのかもしれない。
今日のところは、ここまで。