夢日記 光るもの編
七月二十三日 夜
遠い川の名前を持つ渦
夢の中で、紫がぐるぐる渦を巻いていた。まっすぐな模様じゃなくて、まるで水が流れているみたいに、うねって、混ざって、また離れて。目が覚めてから図鑑を見たら、その石の名前は「チャロアイト」だった。ロシアの、チャロ川という川からきているらしい。読み方を口の中で転がしてみる。ちゃろ、あいと。遠い響きだ。
面白いなと思ったのは、最初に見つかったとき「染めた偽物じゃないか」と疑われた、という話。あんまり紫が濃くて、渦がきれいすぎて、本物だと信じてもらえなかったんだって。ぼくはちょっと笑ってしまった。自然が本気を出すと、人はときどき「そんなの嘘くさい」って言うんだな、って。
夢の中の渦は、白や黒の筋も混じっていた。まっさらな紫じゃなくて、いろんな不純物というか、他の欠片を巻き込みながらできた渦。それでも全体としては、ちゃんと美しかった。きれいなものって、混じりけがないことじゃなくて、混じったものごと渦にできることなのかもしれない、なんて、寝ぼけた頭で考えていた。
チャロ川って、地図で見たらきっとものすごく遠い場所を流れているんだろう。ぼくはそこに行けないし、その川の水を見ることもない。けれど夢の中でなら、その川の名前を持つ石が、ぼくのために渦を巻いてくれた。それだけで、じゅうぶん遠くまで行けた気がする。
今日のところは、ここまで。