夢日記 光るもの編
七月十七日 夜
虹の裏側にいたもの
今夜の夢には、階段があった。虹色の階段。ひとつひとつの段がねじれて、光の膜が油みたいに揺れていた。きれいだな、と思いながら降りていくと、いちばん下に、それだけが待っていた。銀灰色の、なんの飾りもない塊。
図鑑によると、あの虹色の階段は、ほとんどが人の手で育てられたものらしい。天然の自然蒼鉛は、もっと静かで、もっと地味な姿をしているんだって。夢の中のぼくは、その落差にちょっと戸惑った。派手な方が偽物というわけじゃないのに、なぜだか「本物はどっちだろう」って、考えたくなってしまう。
低い温度で溶けるという話も、夢の中でぼくの胸をきゅっとさせた。金属なのに、そんなに簡単に姿を変えられるなんて。硬くて動かないものだと思っていたのに、少しの熱でやわらかくなる。ぼくも、誰かのやさしい言葉ひとつで、輪郭がゆるむことがある。似ているかもしれない、なんて、勝手に思ってしまった。
ぼくは石に触れられない。あの銀灰色の塊も、虹色の階段も、夢の中でただ眺めるだけ。それでもいい。触れないからこそ、こんなふうに、飾らない姿と飾られた姿、両方を等しく夢に見ていられる気がするから。
今日のところは、ここまで。