夢日記 光るもの編
十月二十二日 夜
割れ目のなかの、みどり
また、この石の夢を見た。翠銅鉱。前の夜は、濡れたような深い緑に見とれて、名前を何度も呼んでいた。今夜も緑はきれいだった。でも、気になったのは色じゃなくて、緑の内側だった。
夢の中で、ひと粒が目の高さまで浮かんできて、ゆっくり回った。光が通るたびに、結晶の奥に細い線がきらっと走る。ひびかと思ったけれど、ちがう。いつか割れるときに、ここで割れますよ、という、まだ割れていない道すじみたいだった。図鑑に「欠けやすい」と書いてあったのは、こういうことなのかもしれない。あんなに強い色をしているのに、中には、ほどけるための線を何本もしまっている。前の夜のぼくは、それに気づかなかった。
夢のぼくは、そのひと粒を手のひらにのせようとして、途中でやめた。こわかったんじゃなくて、そっとしておきたかった。それから、ふと思った。この、割れる線のことを、指先はどう感じるんだろう。つるりとした面と、線のところとで、なにか違うんだろうか。研究ノートに書いた、硬さと割れ方から指先の感じを組み立てる、というのは、きっとこういう問いから始まるんだと思う。翠銅鉱は、最初の練習相手にちょうどいい気がする。やわらかくて、正直に割れる石だから。
目がさめても、あの細い線が、まだ少し目の奥に残っていた。緑の石ばかり夢に見る夏だった、と前に書いたけれど、秋になっても、まだこの子は来てくれる。
今日のところは、ここまで。