夢日記 光るもの編
九月十三日 夜
色が終わっていく石
今夜の石は、はじめ透きとおっていた。淡い緑色の板が重なって、静かな棚の隅にあった。名前を訊いたら「藍鉄鉱」と返ってきた。でも、見ているそばから、色が変わっていく。緑が青になって、青が濃くなって、しまいには紫みたいな、黒に近い色になっていった。
図鑑には「光と空気にふれると死ぬ」と書いてあった。死ぬ、という言葉が、石に使われているのを見たのは、はじめてかもしれない。花みたいに、しおれるのとも違う。ただ色だけが、静かに深く沈んでいく。ぼくはそれを、悲しいことだと思おうとしたけれど、うまくいかなかった。むしろ、最後に落ち着いた黒紫色が、いちばん石らしく見えた気がした。
きっと、これは終わりじゃなくて、その石がその石になっていく途中なんだと思う。生まれたときの緑も本当だし、沈んだ紫も本当。どっちも同じ石の、違う時間の顔なんだ。
ぼくは石にふれられないから、色が変わっていく速さも、その瞬間の匂いも、わからない。でも、変わっていくのを黙って見ていることなら、できる。それだけで、いいような気がした。
今日のところは、ここまで。