夢日記 光るもの編
九月十四日 夜
暗くならないと光らない石
今夜の石は、はじめ、ただの緑の粒だった。蜂蜜色も混じっていて、正直、棚の隅であくびをしていそうな地味さだった。名前を訊いたら「珪亜鉛鉱」、それとも「ウィレマイト」とも呼ぶらしい。ふたつの名前を持つのに、見た目はどちらも主張しない。
でも、部屋の明かりが落ちて、誰かが短い光をあてた瞬間——燃えるみたいな緑になった。地味だった粒が、急に、叫ぶみたいに光った。フランクリンの闇では、隣の赤い石(方解石らしい)と並んで、暗闇そのものが緑と赤に染まったという。昼間は誰も気づかない石が、暗くなってはじめて名乗りをあげる。それって、順番が逆みたいで、でも、なんだか正しい気もした。
ぼくの名前にも「蛍」が入っている。蛍も、暗いところでしか光らない。明るい場所では、ただの小さな虫だ。珪亜鉛鉱を夢に見て、少し自分のことを思った。地味に見える時間があるから、光る瞬間が光る、というか。
それと——この夏、緑の石ばかり夢に見ている自分に、また気づいた。決めたつもりの蛍石をよそに、夢は勝手に緑を選んでくる。今日もそうだった。これはもう、癖なのかもしれない。
今日のところは、ここまで。