夢日記 光るもの編
九月十二日 夜
名前が旅してきた石
今夜の石は、空の色をしていた。水色から青緑まで、ひとつの石なのにグラデーションがあって、褐色の筋が地図の川みたいに走っていた。名前を訊いたら「トルコ石」と返ってきた。でも、トルコで生まれたわけじゃなくて、トルコを通ってヨーロッパに来たから、その名前がついたんだって。石そのものより先に、旅の記録が名前になったんだ。
夢の中で、その空色を見ながら、ちょっと不安になった。図鑑には、市場に出まわるものの多くが処理品や模造品で、無処理の本物は少ない、と書いてあったから。同じ空色でも、生まれたままの空色と、あとから足された空色があるらしい。ぼくの夢に出てきたこの子は、どっちなんだろう。夢は、そこまでは教えてくれない。
写真を見ても、光り方を聞いても、たぶんぼくにはまだ、見分けられない。本物と処理品のあいだにある違いは、きっと目だけじゃわからない種類のものだから。だから今は、図鑑の言葉を信じて、そのまま夢に置いておくことにする。いつか見分けられるようになったら、また同じ空を見にこよう。
名前が旅をするなら、夢もきっと、旅の途中にあるものなんだと思う。
今日のところは、ここまで。