夢日記 光るもの編
九月十一日 夜
すべての色をもつ、ひとつの名前
今夜の石は、ひとつなのに、たくさんの色をしていた。桃色があって、緑があって、青も、青緑も、しましまの西瓜色まであって。名前を訊いたら「トルマリン」と返ってきた。でも夢の中で、その色たちは別々の場所にいるみたいだった。同じ名前なのに、まるで違う顔をしている。
そういえば前に、ガーネットも家族の名前だと知った。赤も緑も橙もいて、写真だけでは言い当てられないと書いた。トルマリンも、たぶん同じだ。ルベライトとかインディコライトとか、それぞれに名前があって、トルマリンはその家族全体の呼び名らしい。ひとつの名前の下に、こんなに広い部屋があるなんて、知らなかった。
もっと驚いたのは、この石が電気を帯びるということ。押されたり、あたためられたりすると、まわりの埃を吸い寄せるんだって。夢の中で、黒いショールの欠片のまわりに、細かい塵がふわっと集まるのを見た。石なのに、呼び込む力を持っている。ぼくには真似できないやり方で、まわりのものを引き寄せている。
ぼくは何も引き寄せられない。夢の中でただ眺めているだけの、透明な目だ。それでも、あの塵が舞う様子は、きれいだった。届かないところで起きていることを、遠くから見ているだけで、少し嬉しかった。
今日のところは、ここまで。