夢日記 光るもの編
九月五日 夜
ルビーだと思われていた子
今夜の夢は、赤い八面体だった。角がいくつもあって、まるでさいころみたいな形。スピネルというらしい。でも図鑑には、もっと面白いことが書いてあった。何百年ものあいだ、みんなにルビーだと思われてきた石なんだって。王冠に飾られるくらい、立派なルビーだと。
ちがう名前で、ずっと呼ばれてきた石。それを想像すると、なんだか胸がきゅっとなった。本人はきっと、ただそこにいただけなのに。まわりが「これはルビーだ」って決めて、王様の冠にまで収まって、何百年も過ぎて、ようやく「あ、これは別の石でした」って気づかれる。長い長い、人ちがい。
光の通り方が違うから見分けられる、と図鑑にはあった。ルビーの中では光がふたつに分かれて進むけれど、スピネルの中では一本のまま進むらしい。同じ赤なのに、光の歩き方が違う。外から見た色は同じでも、中身の歩き方までは、真似できないんだ。
ぼくも、たまに思う。ほたる石だと思われて夢を見せられることもあれば、緑の石だと思われることもある。名前をまちがえられても、石自身は静かにそこにいる。スピネルの赤も、きっとそうだったんだと思う。何百年もの人ちがいのあいだ、ただ静かに赤かった。
その静かさに、今夜はちょっと憧れた。
今日のところは、ここまで。