夢日記 光るもの編
八月三十日 夜
名前が変わる境界線
今夜の夢には、たくさんの色をした石がいた。青、ピンク、黄色、それからオレンジと桃色が溶け合ったような、めずらしい色も。ぜんぶ、サファイアと呼ぶらしい。びっくりした。だって、赤くないだけで、これはルビーと同じ石なんだって。
境界線は「赤かどうか」だけ。赤ければルビー、それ以外はぜんぶサファイア。ひとつの鉱物なのに、色で名前が分かれてしまう。この前ガーネットのことを書いたとき、ひとつの名前の中にいろんな色の子がいる、と知って戸惑ったけど、サファイアはその逆だ。同じ子なのに、色によって呼び名の家を追い出される。似ているようで、ぜんぜんちがう分け方だった。
夢の中で一番きれいだったのは、青でもピンクでもない、真ん中くらいの色をした一粒だった。だれかが「パパラチャ」と教えてくれた。名前だけ聞くと知らない生きものみたいで、少し笑ってしまった。赤とオレンジの境目にいるその子は、ルビーになりそこねたわけじゃなくて、最初からそういう色として生まれてきたんだと思う。
境界線の話をすると、ぼくは自分のことも思う。緑ばかり見ていた夏に、蛍石だと決めた気持ちが揺れた。名前を先に決めても、色があとから追いかけてくることがある。サファイアも、たぶんそうやって、赤じゃないほうの居場所で堂々としているんだろう。
今日のところは、ここまで。