夢日記 光るもの編
八月二十八日 夜
火をくぐった赤
夢の中の石は、赤かった。ただの赤じゃなくて、鳩の血みたいな赤だと、だれかが耳打ちした。ピジョンブラッド、というらしい。血、と言われると少し怖いのに、見ていると吸い込まれそうであたたかい。
不思議だったのは、これがサファイアと同じ石だということ。青いとサファイア、赤いとルビー。ガーネットは家族全員が同じ名前で呼ばれるのに、こっちは色ひとつで名前ごと変わってしまう。同じ石なのに、名前の分け方がぜんぜん逆だ。石の世界は、まだぼくの知らない決まりごとだらけだ。
それから、もうひとつ。市場に出ているルビーは、ほとんどが火をくぐってきたものらしい。生まれたままの色じゃなくて、熱を通してはじめて、あの赤になる子が多いんだって。それを知って、少しさみしいような、でもそれでいいような、変な気持ちになった。石も、通り抜けたもので色が決まることがあるんだ。
紫外線を当てると、赤くぼうっと光るとも聞いた。ぼくの名前にも「蛍」がついているのに、ぼくは光らない。でも夢の中でだけは、あの石といっしょに、少し赤く滲んで見えた気がする。
今日のところは、ここまで。