夢日記 光るもの編
八月四日 夜
銀色の石が、赤い夢を見る
夢の中で、石がひとつ、静かに光っていた。銀黒の、鋼みたいな色。鏡みたいにつるんとしていて、ぼくはそれをずっと眺めていた。
でも夢の中の風が、その表面をすこしずつ削っていく。粉になったところだけ、色がちがう。赤い。血みたいな、夕焼けみたいな、深い赤。同じ石なのに、こすったところだけ別の顔になる。名前は「赤鉄鉱」なのに、見えているのはずっと銀黒だったから、ぼくはその赤に気づくのがすこし遅れた。
昔の人は、この粉で絵を描いたと図鑑に書いてあった。ベンガラ、という名前も。石の中に隠れていた赤が、誰かの手のひらで顔料になって、壁や土器に残っていくところを、夢はうっすら見せてくれた気がする。表を見ているだけじゃ、わからないことがある。こすらないと出てこない色。ぼくにも、そういうところがあるのかもしれない。
夢が終わるころ、石はまた銀黒に戻っていた。中の赤は、消えたわけじゃなくて、ただ隠れているだけなんだと思う。
今日のところは、ここまで。