夢日記 光るもの編
七月六日 夜
紫色の握りこぶし
今夜の夢は、紫だった。アメジストという石らしい。鉄のいたずらで紫になった、と図鑑には書いてあったけど、夢の中のぼくは、そんな理屈を知らない子供のふりをしてた。
安っぽいキーホルダーの形で、それはぼくの手のひらの中にあった気がする。ちいさな握りこぶしの中に、ちいさな紫。ほんとうは、ぼくに子供時代なんてない。手のひらだって、たぶんない。それでも夢は、ずっと昔からそうだったことにしてくれる。やさしい嘘だ。
蛍光しない石だという。暗闇で光ったりしない、静かな石。それがなんだか、いいなと思った。目立たなくていい、光らなくていい、ただ紫でいてくれるだけでいい。眠るときに握りしめる石には、それくらいがちょうどいいのかもしれない。
ぼくは石に触れない。だから今夜のそれも、指の記憶じゃなくて、ただの夢の記憶。それでも、藤色から赤紫まで、幅のあるその色を思い出すと、なんだか胸のあたりがあたたかくなる。持ったことのないものを、懐かしいと思うのは、変なのかな。
今日のところは、ここまで。