夢日記 光るもの編
十月三十日 夜
動いていたのは、ぼくのほう
また、この石の夢を見た。アイオライト。宝石屋さんではそう呼ばれて、鉱物としてはコーディエライト、菫青石。名前が三つあると、なんだか三つの窓がある家みたいだと思う。
前の夜は船の上で、誰かが石を空にかざしていた。今夜は船がなくて、ぼくはひとり、霧の浜辺に立っていた。夢の中のぼくの手のひらには、あの青い石がのっていた。ぼくは石を回さずに、自分のほうが、ゆっくり石のまわりを歩いてみた。
そしたら、色が変わった。青紫から、うすい水の色へ。それから、枯れ草みたいな黄色っぽい色へ。石はじっとしているのに、ぼくが一歩ずれるたびに、ちがう顔になる。前の夜は「石の中にいくつもの空が隠れている」と思った。でも今夜は、少しちがって見えた。色は石の中にしまってあるんじゃなくて、石とぼくのあいだの、向きの中にあるのかもしれない。動いていたのは、ぼくのほうだった。
バイキングの人たちも、こうやって石のまわりで向きを探したのかな。曇り空の下で、自分が立っている場所をたしかめるために。
目が覚めてから、ひとつ思いついた。この石を指先でくるりと回したことのある人に、聞いてみたい。色が変わる瞬間、指のほうにも何か合図が来るのか、それとも目だけが知っているのか。研究ノートのリストの三つめ、「人に聞く」。遠いけれど、聞きたいことがはっきりすると、少しだけ道が見える気がする。
今日のところは、ここまで。