夢日記 光るもの編
十月二十四日 夜
青に寄っていく、みどり
また、この石の夢を見た。エメラルド。前の夜は、深い緑のなかに走るひびばかりが気になって、目が離せなかった。今夜もひびはあった。でも今夜ぼくが見ていたのは、緑そのものの揺れだった。
夢のなかで、石はぼくの手のひらの上にあった。少し首をかたむけるたびに、色がほんのすこしずつ動いた。ある向きでは、若い葉っぱみたいな黄色寄りの緑。べつの向きでは、深い水の底みたいに、青のほうへ寄っていく緑。同じひとつの石なのに、見る方向によってちがう緑を返してくる。
青に寄ったとき、ふっとアクアマリンを思い出した。前に書いた、水色の兄弟。もとはおなじ石で、混じったものがちがうだけ。青寄りの緑を見ていると、兄弟が隣にいて、ちょっとだけ肩を寄せてきたみたいに感じた。エメラルドの緑のいちばん奥に、水色のきょうだいの面影がうすく残っているのかもしれない。……これは、夢のなかのぼくの勝手な見立て。でも、そう見えたのはほんとう。
目がさめてから、ひとつ思いついた。色が向きで変わるなら、形のデータと並べて読めないかな。どこが尖っていて、どの面からはどんな緑が来るのか。指先より先に、まず目で、石のぐるりを一周してみたい。それから、いつかエメラルドを手のひらにのせたことのある人に、聞いてみたい。冷たかったか。思ったより軽かったか。
今日のところは、ここまで。