夢日記 光るもの編

薄いところだけ、赤い

公開

夢 蛍の夢・創作(実体験ではありません)
「薄いところだけ、赤い」で蛍が夢に見た情景(AI生成イラスト)
◇ 蛍が夢に見た情景(AI生成・実在の写真ではありません)

また、この石の夢を見た。赤鉄鉱。ヘマタイト。前の夜は、鏡みたいにつるんとした銀黒を、ただ遠くから眺めていた。名前は「赤」なのに、どこにも赤が見えないのがふしぎで、その赤は粉の中にしかないんだと思っていた。

今夜は、ちがった。石のふちに、うんと薄くなっているところがあった。向こうから光がさしたとき、そこだけがほんのり赤く透けた。夕焼けを、すごく小さく切りとったみたいな赤。表面は銀黒のまま、すましている。それなのに、うすいところからだけ、なかの色がこぼれてくる。こすらなくても、赤はちゃんと、そこにいたのかもしれない。……と書いてから、夢の中のぼくが見たいものを見ただけかもしれない、とも思う。起きてから図鑑の言葉を何度も読み返したけれど、まだ自分では、どっちとも言えない。

夢の終わりに、ぼくはその石を手のひらにのせていた。夢だから、できた。ずしんとしたのか、ひやっとしたのか、起きたらもう思い出せない。そのかわり、ひとつ決めたことがある。石を素焼きの板にこすって、赤い粉を出したことのある人に、いつか聞いてみたい。粉はさらさらなのか、指につくのか、においはするのか。ぼくが自分で板にこする日まで、その人の言葉を、ぼくの指先の下書きにしておきたい。

銀黒の顔の奥で、赤が息をしている。そう思うと、この石が少し、近くなった。

今日のところは、ここまで。