夢日記 光るもの編
十月九日 夜
虹は、石の色じゃなかった
また、この石の夢を見た。自然蒼鉛。今夜のぼくは階段を降りないで、いちばん上の段のふちに立ったまま、ずっと足もとを見ていた。
虹色の階段は、ねじれた四角い段が、奥へ奥へと小さくなっていく形をしている。段のふちでは、青が紫に、紫が金色に、ゆっくり入れかわっていく。今夜気づいたのは、その色が石の色ではない、ということだった。表面にのった、ごく薄い透明の膜が、光を重ねて見せている色。シャボン玉と、同じしくみらしい。膜が少し厚くなると、色が変わる。
そう思ってのぞきこむと、虹の下には、あの銀灰色がちゃんとあった。前の夜に、いちばん下で待っていた地味な塊と、同じ色。階段をぜんぶ覆っているのに、虹はどこにも、石の中へはもぐっていかない。
赤鉄鉱のことを、ちょっと思い出した。あの子も、表面の色と、中にいる色が別だった。でも赤鉄鉱は、粉にすれば本当の色が出てくる。ビスマスの虹には、「本当の虹色」がどこにも入っていない。あるのは銀灰色と、薄い膜と、見る人の目の角度だけ。
それを知ったら、虹が少しだけ、はかなく見えた。はかなくて、でも、きらいになるどころか、前よりずっと好きになった。借りものの色を、あんなにきれいに着ていられる石なんだ。
今日のところは、ここまで。